top of page

パニック障害に対する鍼灸治療

  • 執筆者の写真: 鍼灸 前倉
    鍼灸 前倉
  • 18 時間前
  • 読了時間: 3分

 パニック障害は、突然襲ってくる動悸や息苦しさ、強い不安感などにより、生活に大きな影響を与える疾患です。

「電車に乗れない」「外出が怖くなる」「また発作が起こるのでは…」といった“予期不安”が日常を縛ってしまうことも少なくありません。


薬物療法や認知行動療法がよく知られていますが、実は自律神経の調整を得意とする鍼灸は、パニック障害の症状緩和にとても相性が良い治療法です。

ここでは、パニック障害と鍼灸の関わりについて、臨床の視点から詳しくご紹介します。





パニック障害とは?


パニック障害は、以下の3つを中心に症状が進行すると考えられています。


①パニック発作

突然起こる動悸、息苦しさ、胸の締め付け、めまい、手足の震え、冷汗など。

「このまま死んでしまうのでは」という強い恐怖を伴うこともあります。


②予期不安

「また発作が出るのではないか」

この不安が常に頭を占め、行動を制限してしまいます。


③広場恐怖(回避行動)

電車・バス・スーパー・人混み・長時間待つ場所などの“逃げられない環境”を避けるようになります。


これらはすべて、自律神経のバランスの乱れと深く関係しています。



鍼灸がパニック障害に向いている理由


パニック障害の根底には、

✔ 交感神経が過剰に優位

✔ 呼吸が浅くなる

✔ 体が常に緊張状態

といった状態があります。


鍼灸はこれらを総合的に整えるアプローチが得意です。



1. 自律神経の調整

鍼刺激は副交感神経を高め、身体をリラックスさせる方向に働きます。

脈拍・筋緊張・呼吸が落ち着きやすくなり、発作の頻度を減らす一助になります。



2. 呼吸筋の緊張を緩める

ストレスで固くなる

・胸郭まわり

・首肩まわり

・横隔膜

などを緩めることで、自然と呼吸が深く入りやすくなります。



3. 不安感を和らげる体質改善

東洋医学では、「肝(ストレス反応)」「心(精神活動)」「腎(不安・恐怖)」のアンバランスが関係すると考えます。

体質を丁寧に見極め、ツボを選択することで、

「不安に反応しやすい体」→「落ち着きやすい体」へ導きます。



4. 薬との併用も可能

抗不安薬や抗うつ薬を服用していても、鍼灸は併用できます。

副作用はほとんどなく、安全性が高い補完療法として世界的にも認められています。


東洋医学では“心と体は表裏一体”。

精神症状であっても、体の状態を整えることで心も安定します。


どのくらいで効果が出る?


個人差はありますが、臨床では以下のような経過が多く見られます。


  • 1~3回:呼吸が少し楽、寝つきが良い、肩の力が抜ける

  • 5~8回:予期不安が弱まり、外出しやすくなる

  • 10回以降:発作の頻度が減る、生活の制限が少なくなる



予期不安は「感覚のクセ」なので、継続治療が非常に有効です。


鍼灸がサポートできるのは “心の土台づくり”


パニック障害は、

「気合い」でも「努力」でも治せるものではありません。

自律神経が乱れた状態では、誰でも発作が起こり得ます。


鍼灸は、乱れた自律神経を整え、

呼吸や体の緊張をゆっくりと正常に戻していく治療です。


こんな方に特におすすめ

  • 発作で外出が怖い

  • 薬だけでは不安が残る

  • 呼吸が浅く、胸が締め付けられる

  • 首肩が常に緊張している

  • 夜に不安感が強くなる

  • 自律神経の乱れを根本から調整したい


あなたの生活に再び「安心して過ごせる時間」を取り戻すために、

鍼灸はとても心強いサポーターになります。


まとめ

  • パニック障害は自律神経の乱れが根本にある

  • 鍼灸は自律神経調整に優れ、発作・予期不安に効果的

  • 呼吸・筋緊張・体質改善など多方面からアプローチできる

  • 継続することで身体の反応が安定し、生活の幅が広がる



パニック障害に悩む方の“日常を取り戻す力”になる治療です。

もし症状でお困りでしたら、鍼灸という選択肢をぜひ知っていただければと思います。

 
 
 

最新記事

すべて表示
COPD(慢性閉塞性肺疾患)に対する鍼灸治療の効果

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、長期の喫煙や大気汚染などによって肺がダメージを受け、息切れ・咳・痰が続く病気です。進行していくにつれ、少しの動作でも苦しくなり、「動きたいのに動けない」という負担が大きくなります。近年、医療の現場では薬物療法に加えて、リハビリテーション、栄養管理、在宅酸素療法など、総合的なケアが重視されています。その中で注目されているのが、 鍼灸治療による症状緩和と生活の質の向上

 
 
 
呼吸器疾患に対する鍼治療について

呼吸器疾患に対する鍼治療について、 私は2012年より大学病院や専門医療施設で臨床研究や病棟・外来での鍼灸臨床を行なっている鍼灸師です。 鍼灸治療といえば、肩こりや腰痛などをイメージされると思いますが。 近年は呼吸器疾患に対しても適切に鍼灸治療を行えば安全で様々な症状の緩和に有効だと報告されています。 では鍼治療どのような症状に効果が期待出来るか? 肺気腫 の動いた時の息切れや痰んが切れにくいなど

 
 
 

コメント


bottom of page